北八甲田連峰と南八甲田連峰からなり、青森市・上北郡・南津軽郡および黒石市にまたがる。十和田八幡平(とわだはちまんたい)国立公園の一部をなす。北八甲田連峰は八甲田大(はつこうだおお)岳(一五八四・六メートル)を主峰とし、高田大(たかだおお)岳(一五五二メートル)・井戸(いど)岳(一五五〇メートル)・赤倉(あかくら)岳(一五四八メートル)・前(まえ)嶽(一二五一・七メートル)・田茂萢(たもやち)岳(一三二四メートル)・小(こ)岳(一四七八メートル)・硫黄(いおう)岳(一三六〇・二メートル)・石倉(いしくら)岳(一二〇五メートル)・雛(ひな)岳(一二四〇・三メートル)の一〇峰があり、南八甲田連峰には上(うえ)岳ともよぶ櫛(くし)ヶ峯(一五一六・五メートル)・下(した)岳(一三四二メートル)・駒(こま)ヶ峯(一四一六・三メートル)・赤倉(あかくら)岳(一二九八メートル)・乗鞍(のりくら)岳(一四四九・八メートル)などが属する。これらが那須火山帯に属する八甲田火山群を形成し、山容は円錐形または屋根形である。東へ七戸(しちのへ)川・奥入瀬(おいらせ)川、北へ荒(あら)川・駒込(こまごめ)川、西方へ浅瀬石(あせいし)川その他が流れ出る。標高四〇〇メートルから上はブナ林を主とし、標高一〇〇〇メートルを超えるとアオモリトドマツを主とする針葉樹林、標高一四〇〇メートルから上はハイマツ・ナナカマド・ミヤマハンノキなどの植生がみられ、頂上付近にはガンコウラン・コケモモなどが群生している。地獄(じごく)沼・地獄湯の沢その他の噴気孔跡があり、酸(す)ヶ湯、谷地(やち)・蔦(つた)・猿倉(さるくら)(現上北郡十和田湖町)などの温泉がある。
古くは「糠壇(こうだん)の岳」(津軽一統志)と称され、八耕田山とも書き、明治初年の「新撰陸奥国誌」は「山踉豊大にして(中略)山峯八に別る。前岳高倉岳こほれ岳井戸岳釜伏山小川の大嶽砂岳と云(中略)甲田又高田に作る。八耕田とは八峯あるよりの名なる」と記しているが、一峰不足している。天明年間(一七八一―八九)に当地を旅した橘南谿は「東遊記」に次のように記した。
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